WORK
Kyoto Concert Hall Signage Renewal

京都コンサートホールサイン改修

概要

場所:京都市左京区下鴨半木町
種別:サイン計画
設計協力:NIIMORI JAMISON ARCHITECTS
設計:二〇一九年
施工:二〇二〇年

オマージュ

 師である磯崎新が設計した京都コンサートホール。磯崎がバブル期の日本に設計した建築といえば、なら100年会館や静岡のグランシップが有名なのだが(後者がinfamousでないことを願う)、京都コンサートホールは隠れた名作だと思っている。

 そんな京都コンサートホールは――他の国内の公共施設にも同様に蔓延している――過剰なサインという病に冒されていた。張り紙の氾濫、といったほうがわかりやすいかもしれない。それを整理するというプロジェクトである。

 サイン計画は心理学や人間工学に直結し、必然性の高い「計画」的なデザインの範疇であると同時に、相当に恣意的なデザインが発現してしまうグラフィカルな分野でもある。京谷建築設計室の色を出すと原設計の雰囲気を失いかねない。そもそもの建築が強烈な香りを放っているので、極力、無味無臭のデザインを心がけた。磯崎にもすべての図面・報告書を提示し、その方針は間違っていないとのお墨付きをもらった。事件を起こすべきだったろうか。

 とはいえ、その中にもいくらかデザインのお道化、twist を混ぜ込んである。例えば岡田信一郎は改築や改修の際に、一見しても、もとの建物との違いがわからないようなデザインを行っている。

京都コンサートホールのファサード

 ところで、初めてこの建築を見たとき、正直なところ磯崎作品の中ではとりたてて出来のいいものとは思わなかった。しかし、本プロジェクトに先行しておこなった中長期改修計画をはじめるにあたって図面を熟読し、いくつかの資料を確認したところ、ずいぶんと考えが変わった。たったひとつの思い込みを訂正すれば、この建築は傑作だった。ファサードの向きである。 

 てっきりこの建物のファサードは道に面した東側だと思い込んでいた。誤読を促すかのようにモンローカーブが据えられている。しかし、この建築の正面は北側だった。今後はこの集団的になっているであろう思い込み、そして建物が建つ周辺の現状を変更できるよう静かに声を出していく。